チャットボットの導入効果を高める上で鍵を握る要素の1つに「シナリオ」があります。シナリオが適切に設計されていれば、ユーザーは求める情報に効率良くたどり着けるからです。
今回は、チャットボットを構築する際に良質なシナリオを設計するための考え方や、具体的な設定のステップについてわかりやすく解説します。シナリオ設計のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
チャットボットのシナリオとは

チャットボットのシナリオとは、ユーザーが必要とする情報に到達できるよう案内するための会話の流れのことです。シナリオは質問と回答で構成されます。ユーザーが抱えている疑問や困りごとを解決するには、ユーザーにとってわかりやすく、進めやすいと感じるシナリオ設計が大切です。
シナリオ設計とは
シナリオ設計とは、ユーザーとの会話の進行内容を決める作業のことです。チャットボットとユーザーによる対話や、選択肢を用いた分岐を作成することを指します。
具体的には、「質問Aに対して、選択肢XYZを表示する」「ユーザーがXを選択した場合には、回答Bを表示する」といった分岐を設計していくことになります。ユーザーの状況に適した選択肢が提示されなかったり、選択した内容に合わない回答が表示されたりすることのないよう、さまざまな状況を想定してシナリオを設計しなければなりません。
シナリオ設計の重要性
チャットボットの導入効果を高めるには、ユーザーが求めている情報までスムーズに到達でき、疑問点を適切に解決できるシナリオが望ましいといえます。ユーザーがストレスを感じることなく会話を進めるには、次の条件を満たすシナリオが必要です。
【理想的なシナリオの条件】
- ユーザーニーズに沿った質問と回答が用意されている。
- 欲しい情報に最短でたどり着ける。
- 選択肢の数が適切でストレスなく回答できる。
- 会話の流れが自然である。
シナリオ設計に必要な考え方
ユーザーが使いやすいと感じるシナリオを設計するには、ユーザーが置かれている状況や抱えている悩みに寄り添うことが大切です。チャットボットを利用するユーザーは、必要とする情報をできるだけ早く得たいと考えています。会話のやり取りをできるだけ少なくするには、ユーザーの視点に立ってシナリオを設計するスタンスが欠かせません。
なお、チャットボットには大きく分けて「シナリオ型」と「AI型」の2種類があります。AIが質問内に使われている言葉の揺れや関連性の高い質問を判断する機能を備えているかどうかが、両者の主な違いです。本記事ではシナリオ型チャットボットについて解説します。
チャットボットのシナリオ設計の方法8ステップ【図解】
チャットボットのシナリオ設計は次の8ステップで進めます。
- チャットボットの導入目的を明確にする。
- KPIを設定する。
- ターゲットを設定する。
- ターゲットの悩みを想定した質問と回答を用意する。
- チャットボットによる対応範囲を決定する。
- 分岐を設計し、シナリオの骨組みを作る。
- シナリオを作成する。
- テスト運用を実施する。
シナリオ設計の全体像を把握しておきましょう。
1. チャットボットの導入目的を明確にする
はじめに明確にしておきたいのは、チャットボットを導入する目的です。企業が抱える課題によって、チャットボットに求められるシナリオも異なります。なぜチャットボットを導入するのかを明らかにした上で、課題を解消するためのシナリオを設計しましょう。以下の表は、企業が抱えている課題とシナリオ作成の目的の一例です。
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企業が抱える課題の例
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シナリオ作成の目的
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ECサイトで営業時間外の顧客対応ができていない
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顧客満足度の向上
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問い合わせ対応の稼働工数が多く、スタッフの業務が圧迫傾向にある
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カスタマーサポートの業務負担の軽減
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新製品リリースにより問い合わせの電話が増え、残業時間が長くなっている
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人件費の削減
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商品をカートに入れたまま購入に至らないユーザーが多い
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離脱率の改善
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サービスサイトの離脱率が高く、資料請求まで至らない
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コンバージョン率の向上
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2. KPIを設定する
次に、チャットボットの導入目的に即したKPIを設定します。KPIを設定することによって、チャットボットが狙いどおりの効果を発揮しているか、改善すべき点がないかを把握しやすくなるからです。代表的なKPIとして、下記の指標が挙げられます。
- 回答率
- 解決率
- 起動回数
- 対応件数
- 対応時間/対応件数
- 有人対応比率
- 対応満足度
- チャットボットからのCV数
- Webサイトへの遷移数
多角的な側面から効果測定を行いたい場合には、複数のKPIを設定しておくとよいでしょう。ただし、KPIが多すぎると管理が煩雑になる上に、優先順位が混乱しやくなります。一つひとつのKPIを着実に達成してから、次のKPIの達成を目指すことが大切です。
3. ターゲットを設定する
チャットボットの導入効果を高めるには、ターゲットとなる顧客層を設定し、ユーザーの疑問や困りごとを把握することが大切です。ユーザーニーズを的確に把握することによって、シナリオ設計に必要な質問と回答を導き出しやくなり、自然な会話の流れを作り出せます。
ターゲットを明確にするには、具体的な一人の顧客を想定した「ペルソナ」を設定することをおすすめします。ペルソナとは自社の商品やサービスを利用する人物像のことです。ペルソナを設定することでユーザーの行動特性や抱えている悩み、価値観を洗い出しやすくなります。
4. ターゲットの悩みを想定した質問と回答を用意する
チャットボットを通してユーザーの疑問を解消するには、想定される質問を漏れなく洗い出し、まとめていく必要があります。下記を参考に、質問と回答を用意しましょう。
既存のFAQを参考にする
FAQとは、よくある質問と回答をまとめたコンテンツのことです。定型化できる質問・回答の組み合わせは、チャットボットのシナリオとして活用できます。既存のFAQをそのままシナリオに流用した場合、長文で読みにくくなる可能性があるため、簡潔な文面に書き換えましょう。
過去の問い合わせ内容を参照する
カスタマーサポートが蓄積してきた過去の問い合わせ内容も、シナリオに活用できます。たとえば、電話やメールでの問い合わせ、SNSでの投稿などを参考にするとよいでしょう。詳細なニーズまで網羅できれば、ユーザーが電話やメールで問い合わせることなく疑問を解消できるようになるため、顧客満足度の向上にもつながります。
よくある質問についてカスタマーサポートにヒアリングする
過去の問い合わせ内容がデータ化されていない場合には、カスタマーサポート担当者へのヒアリングを実施し、ニーズを把握する方法もあります。よくある質問の傾向を把握し、シナリオに反映させましょう。
なお、質問項目が多くなるようなら、カテゴリを階層分けする方法もあります。下図のように親カテゴリと子カテゴリに分けることにより、シナリオの管理がしやすくなるでしょう。

シナリオ設計のポイント